


















































周りの現実と、自分の心との間に襞があり、薄い現実を生きているような気がする。この世はマトリックスの世界で、バーチャルな存在かもしれなくて、そしてその中で非現実的に、何かが実現することがあるが、それは自分がそうしたいと思い、そうするからなのだ。
仕事が終わり、帰る準備をして、先輩から話をきく。彼女が帰ったようだ。横目でみる。胸のドキドキがハンパない。水泳の試合での飛びこみ前のように、心臓が高鳴る。黒い重いものが胸の中にドスンと落ちるような異様な感覚と興奮。トイレで口をゆすぎ、髪などをチェックし、階段でオフィスを出る。
小走り。外は暗く、寂しい。前にはいない。走る。バス停まで走る。いない。後ろにいるのか・・・。
バス停で待つのもどうかと。あ、、、、きた。一人だ。
反転し、バス停で待つ。俺は後ろを向く。来るかな来るかな。来る繰る刳るクルクルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~。
もうこうなったら大丈夫なのだ。来た。ああそうさ!ストーカー万歳だ!
暗くて、少し騒音がやかましい。駅までの歩道。彼女はバス停を通り過ぎそうであった。
話しかける。なんとなく、会釈をして近づく。向こうがこちらに気付く。俺はメガネをかけたままだった。外せばよかったのに。
「すみません。一緒に帰っていいですか」
要は、待ち伏せだ。ストーカーだ。ああ、そうさ。
彼女は言った。
「あ、はい」
携帯でメールを打ちながらである。まあ、断る理由もないんだろうな。小さい声で。少し高くて変わったイントネーションだ。変わり者な感じ。
ここですみませんと断ることだってできたはずだ。
ああ、嬉しい。ついにやった!
その子が隣に歩いている。隣で見るのと、遠くから見るのとではやはり違うのだな。
昨日、昼にガン無視されたことから、どんな話題がふさわしいであろうかとIQ250の頭で考えたところ、瞬時に10個くらいの話題が浮かんだのであった。
しかし、いざ本番となってしまうと、話題を忘れてしまった。まず天気の話題、前の話の続き・・・。
会話の内容は、モザイク。
「そういえば・・・で・・・したら、すごく・・・したよ。」
また一人で喋ることになるのかな。単に相手が一言喋るだけでも、ものすごく嬉しいのだが・・。すると、
「・・・すよね。・・・で、分からないと思いますよ」
ちょっと自虐的ギャグ。可愛い。
顔が小さい。色が白い。斜め45度からみている俺。
「そうそう。(笑)すごい沢山あるんですよね。」
「・・・・。」
あれ、ここは笑うところなのだが、通じていない・・・汗 ここは後から考えると、・・・ー。とかボケてみるとよかった。
ここで一応、探したけれど分からなかったというオチをつけて、前の話の続きは終了。
それにしても、暗い中、一人で寂しく人生を呪いつつ、腹話術の練習をしながら帰るのと、美女と隣で無邪気なトークをしつつ帰るのでは、正に天国と地獄。
会社の話題で、ある程度しゃべった。
あれ、何か喋りたそうだぞ。ここは鉱脈か。ネタが埋もれているのかな・・・。案の定、すごいネタであった。笑わせてもらった。
突然、彼女に電話がかかってくる。出る。
俺は微妙に距離をおきつつ、鳴りもしない自分の携帯を眺める。
そしてしばらく歩く。もう隣には来ないのかな。。。。
「失礼しました。」
戻ってきた。それは嬉しい。でも、ああ、彼氏だろうな。
しばらく無言・・・。
「飲み会とかけっこうあるんですね。飲める方なんですか??」
「私はあんまり飲めないです・・・」
ここで、何か、会話がうまくいかなかったようだ。しばし、無言。見つめる目。あれ??? こういうよくわからない間に俺は戸惑う。続ければよいのか。。。まあいっか。
ここで、彼女が何かを取り出した。なんだろう・・? 非常にオシャレな定期入れだった。ということはつまり、やはりこの子はバスではなく、電車を使っているのだ。そうか。
階段を降りる方向で、戸惑った。笑顔。あ、こちら。
「確かに、こっちの方が階段が近いですよね。」
この子は、ちゃんと喋るのであった。ちゃんと人格を持って、過去をもって、生きている一人の女性であった。喋れる。それは幻想の中の女でもないし、理想の具現者でもない。笑うし、表情を変えるし、目も合う。そして自分は誠実なキャラでいこうとしていたが、結局のところ、こうやって誰かと話すことは、そんなに自分にとって苦ではないのであった。ただ、喋ってるだけじゃん。そうなのだ。そーゆーこと。ただ、俺は喋ってるだけ。
下に降りた。俺はやるべき事がいくつかあった。その一つが携帯電話の番号を聞くことだった。あるいはメアドでも良かった。前に初めて話した後、とにかくまた会いたいと狂おしく苦おしく想うのであったが、そのとき思ったのは、もし携帯のメアドとか番号とか知っていたら、すぐに仲良くなれたかもしれないなーということであった。それは実際問題そうではないかもしれないが、アクションをいつでも起こせるし、繋がっていられるかもしれないのであった。少なくとも、毎日毎朝、毎晩、どうやって会おうか、いつ帰るのか待ち伏せしなければとか、いつも悩む必要がないし、偶然にゆだねることなく、作戦も立てやすい。そしてケーちゃんと並ぶではないか。
今は周りに人があまりいない。今だ今だ!!!! もはや今となっては無謀な挑戦であろうと屁とも思わない俺は、言った。
「もしよかったら、携帯のアドレス教えてもらえませんか?」
「それはちょっと。ごめんなさい。」
はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いろんな声がした。『あらま、終わった。ハハハハハ。こーゆーもんさ。』『大丈夫、ここからここから。こっからが勝負だよ』
俺 「もうだめだ・・・」
松岡修造 「ちょっとまって、今・・・何て言った? おいラシー今何て言った!?『もうだめ!?』」
松岡修造 「もうダメとか言ってる間はずっとダメなんだよ!」
松岡修造 「考えろよ!もっと考えろよ!」
俺 「まあ、現実はこんなもんだよ。希望がねーよ・・・」
松岡修造 「希望無い事無い、無いなんて事は無い!どこかにあるはず、探そうよ!」
俺 「・・・告白・・・」
松岡修造 「ほらあるじゃない! ほらみろ!あるじゃないか!」
俺 「いきなり告白するしかないのか・・・」
松岡修造 「そうだ言え!」
俺 「告白しかない!!!!」
松岡修造 「もっと!」
俺 「告白する!!!!!!!!!」
松岡修造 「はい死んだ!今君と、あの子の関係気まずくなって死んだよ!」
今にして思えば、俺の24人のビリー・ミリガンのうちの一人は、松岡修造だったのかもしれない。
それにしてもラクロスで言えば、グッド・トライだよ。と今でも思う。
しかし、ガックリしていた俺は、彼女にどう写っただろうか。可愛そうと思っただろうか。俺が残念がればがるほど、想いが深いということなのだが。
そして話しかけてから、今までで、もっともツラい瞬間であったので、ガックリと黙ってしまっていた。沈黙が30秒。
すると、彼女が話しかけてきた。
「何も言わずにこちらに来てしまいましたけど、こちらで大丈夫ですか」
「あ、大丈夫ですよ。・・まで行きます」
無言。そして電車が来た。
「仕事楽しいですか??」
「そうですね。今は楽しいです」
なぜこの話題を出したかというと、前に話したとき、ちょっと仕事がつらそうだったので、自分がそうだったように、相談に乗ってあげて、悩みを共有する路線でいけばいいじゃないかと思ったからだ。しかし予想外に楽しいと返ってきた。
このとき、けっこう顔を近くにして話していたのだ。遠くで見つめているだけのことを考えると、ありえない!!! そうそう。よかったんやで。
あの子は俺の心を少し傷つけたし、そして俺はあの子に対して、少し何かをあげたし。そういうもんだと思う。心は前よりも近づいたんだと思う。もうこちらの意図は何も隠していないのであり、それは結局のところ、良いとも言えるし、逆にダメであるとも言えるのだ。まあ、このようにすることで、結局生身の自分の実力が見えてくる。そして課題も見えてくる。
「休みの日は何をしてるんですか」
なぜこんな話題を出したのかというと、あまりにもアリキタリというか、社交辞令的でもあるし、会話がうまいとは、お世辞にも言えない感じがするが、それでも何も言わないよりはマシなのであった。そしてそれを聞くことで、彼氏の有無とかが分かるのかもしれないからだ。それにしてもここで言えるのは、自分は最初の挑戦は、恐れを知らずに行って、うまくいく事が多いが、その後、続かず、やり遂げるまでにならないのだという性格が物凄く良く分かる。そして弱気だなーと思う。もっと強気でいかないとダメだな。ガンガン攻めていけよ。
「休みの日は、・・・ですね」
なんか、茶道とかやってそうですよね。生け花とかやってそうですよね。とか、~やってそうですよねパターンをいくらでも言うことはできたのだが、なんか躊躇した。
失礼になるかもしれないなと思い・・・。
彼氏がいるのかな。だがまあいいじゃない。俺の方が良いと思うし。相手の事は知らないし。結局のところ、楔を打ち込むことだ。関係ないし。好きだし。
ああ。そして俺がずっとずっとずっとずっと言いたかった事があった。ああいえばよかったこういえばよかったと、長い間生きていると、常に過去の会話に対して、異常なほどに饒舌になり、心の中のシミュレーション会話が色々とあるのだが、それは相手に対して感じる気持ちを遠まわしにでも伝えてあげることだ。
「・・・さんって、なんか雰囲気ありますよね」
美人ですね。キレイですね。美しいですね。可愛いですよね。じゃなんか不自然だし、言いすぎだし、そして出てきた言葉がこれであった。喧騒の中。むしろ喧騒の中だからこそ、アノニマスな空間として、二人の世界が成立しうるのかもしれない。
褒められたと思って、笑う。ああ、じゃあ被せよう。冗談っぽく。
よかった。少しは褒める笑わす聞くができただろうか。最後に褒めることができてよかった。
そして、こんなことは俺はまず心の底から言う事など、メッタにない。メッタ刺しにない。
そして、少しは俺に対する目線も変わっただろうか。変なナンパ野郎と思っていないだろうか。少しは尊敬してくれないだろうか。
少しは友達になれただろうか。今度はもっと緊張せずに話せるだろうか。今度はもっと爆笑話ができるだろうか。
別に彼氏がいるかもしれないし、それはまあ終わってる事かもしれない。だが、それでも自分を褒めたい。自分を褒めてあげたい。何よりもこうやってドキドキして、挑戦して、それを達成して、得られるこの現実感こそが、良いものだ。これが生きるということなのだ。よかった。生きているなー俺は。
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